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中川昭一氏の「低次元」辞任。

2009/02/17 21:38

 

 G7での記者会見で醜態をさらした中川昭一氏の財務・金融担当相辞任は当然の結末だと思います。

酩酊していたのか、風邪薬を飲みすぎてもうろうとしていたのか、時差ぼけなのか、理由はそのいずれであっても、G7の会見であのような不遜な態度を世界にさらけ出した以上、即刻、辞任してもらわないと日本国民が世界からの笑いものになるだけです。

日本の財政政策、金融政策を一手に担うリーダーとして留まることは、とても耐え難いと感じる国民は多いと思います。森喜朗元首相がTBSの番組で「(中川氏の財務・金融相就任は)選考にはいろいろと異議がある」と語っていましたが、中川氏の辞任で一件落着とはいえず、任命者である麻生太郎首相の責任も免れるものではありません。

麻生首相は、あえて財金分離の流れを断ち切るように、中川氏に財務相と金融相を兼務させ、財金一体化運営をまかせました。麻生首相が行った組閣のなかで最も注目された人事でしたが、それ以前の低次元のことでうやむやになってしまいました。

(後任に与謝野馨経済財政担当相を兼任させるそうですが、これもまた巨大な権限が集中することで問題が多々あると思います)

 

ことの発端となったG7がローマで開催された14日、わたしは朝刊当番だったのですが、日本時間の午後10時(ローマとの時差は8時間)ごろにG7が終了して、本記や解説原稿が届いたものの、終了後に中川氏の記者会見原稿がなかなかこないので、おかしいなと思っていたら、ようやく15日未明にほんのわずか、「予算案の一日も早い成立が最大の景気対策」など二言のみの記事が届きました。

これでは短すぎて、「どうしてだろう」といぶかしんでいたら、ちょっと長めの原稿が届いたものの、読んでみたら白川方明総裁のコメントが付け足されだけ。「よっぽどつまらない会見だったのだろうな」「せっかくG7で日本の政策をアピールできる場であるのに」と思いながら、帰宅して翌朝のテレビを観て、びっくりというか、小泉純一郎元首相ではありませんが、笑っちゃうくらい呆れました。

中川氏は一目見て、酩酊しているのではないかと疑うくらい、ろれつが回らず、ひどい態度なのです。

記者会見の模様はテレビで何度もされていますが、財務・金融相が日本の金利を間違え、というか記憶していないのは、驚きです。「声明文みたいなものが出ましたが」と発言していましたが、「みたいな」はG7そのものをバカにしています。質問者がどこにいるか分からず、「どこだ」と偉そうに言い放つのは、とても大臣会見とはいえるものではありません。「反保護主義という議論があったかと思うが」との質問には、寝ていたのか答えず仕舞いです。

 眠そうな顔、口びるを突き出した顔、白川方明総裁の前のグラスを取る姿など、とても大臣としての品格のかけらもありません。英タイムズ紙には、「記者会見の醜態は最も視聴された」と皮肉られています。

 あの会見はG7を終え、世界経済をリードする7カ国の一角である日本が、どのような存在感を示したかを世界に発信する場です。また、日本国民に対して、経済の安定化に向けていかに世界との協調したのか、メッセージを送る場です。

 中川氏は「自分の健康管理の不注意」と釈明していますが、体調が悪いとの理由であっても許されるような態度ではありません。酩酊かどうか不明ですが、酔ったときこそ、その人柄、その人の本性が表れるものです。残念ながら、国民の代表として選ばれた国会議員、その国会議員のなかからリーダーとして選ばれた閣僚として、恥ずかしいかぎりです。

 

 古典や哲学、芸術などを通じて真のリーダーを育てようとして創立された日本アスペン研究所が10周年を向かえ、「リーダーシップと哲学」をテーマにしたシンポジウムが昨年10月に開かれました。残念ながら参加できなかったのですが、その内容を紹介した記念号が送られてきたので、たまたま目を通していると、米アスペン研究所のウォルター・アイザクソン理事長がリーダーについて、こう述べていました。

 「頭のいい、知的な人は大勢いますが、必ずしも全員がすばらしい指導者、リーダーになるわけではない。リーダーには知性だけではなく創造力も必要で、その創造力は謙虚さによって生じてくるものです。謙虚であれば世界に対してオープンな見方を持つことができ、寛容さ、許容力も備わっています」

 残念ながら、中川氏の会見からは知性も、謙虚さも見受けられませんでした。

 

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神戸製鋼所社長はなぜ辞任したか。

2009/02/12 20:23

 

 神戸製鋼所の社員は必ず、名刺大の一枚のカードを携帯しているはずです。

 「法令、社内ルールに則っているか」「企業倫理に反していないか」

 こう書かれ、一人ひとりにコンプライアンス(法令遵守)を常に意識させ、徹底させているのです。そのうえで、カードには上司や職場に相談しても、解決が難しいと思われる場合は、社内の倫理相談室と弁護士(弁護士への連絡は東京と大阪の2カ所)に連絡するよう電話番号が記されています。

 にもかかわらず、2月10日、神戸製鋼所が政治資金規正法で禁じられた寄付行為という不祥事が発覚し、犬伏泰夫社長と水越浩士会長が3月末で辞任することを発表しました。

 

2年ほど前、犬伏氏に会って話を聞いたことがあります。

18年5月の加古川製鉄所でのばい煙データ改竄事件の後だったためか、話のほとんどが、「神戸製鋼所はコンプライアンスをいかに徹底させているか」でした。コンプライアンスや社内通報制度を徹底させるため、社員にカードを持たせるようにしたと、このときに犬伏氏が一生懸命に語っていたのを思い出しました。

ほかに話すことはないのかと思うほど、繰り返し、繰り返し、コンプライアンスに関することばかりで、言外に「ここまで取り組んでいるのだから、もう繰り返さない。信じてほしい」との熱意が伝わってきました。

神戸製鋼所は全社的なコンプライアンス活動を推進するため、取締役会の諮問機関として独立した常設のコンプライアンス委員会を設置したこと。携帯用のカードだけではなく、「企業倫理綱領」(平成12年6月制定、20年4月改定)を記載したハンドバックを作成し、役員、社員に配布して、周知徹底を図ってきたこと。コンプライアンスを社員教育のメニューに加え、専門研修も実施し、各部にはコンプライアンス責任者やコンプライアンス管理者を設置して、それぞれの職場での徹底に取り組んできた―ことなどなどです。

いま振り返ると、その社長の熱意は残念なことに、水泡に帰すことになったといえるかもしれません。

 

 神戸製鋼所が明らかにした事件は、組合出身議員側への寄付行為を12年の法改正で全面的に禁じられたにもかかわらず、それまでの慣行を見直さず、12年以降も漫然と継続してきたというものです。

その不適切な支出は8選挙で合計2700万円。事務所の設置やポスター製作などにかかわる費用を捻出していたのです。この法令違反の罰則は1年以下の禁固または50万円以下の罰金です。企業の総務担当者なら、企業や労組などからの寄付は政党や政治資金団体に限られることは知っているはずです。法令違反だとの認識がなかったのでしょうか。それにしても、あまりにもお粗末な事件です。

金額の多寡で責任の取り方に違いがあるわけではありませんが、これくらいの事例でのトップ辞任は異例です。それだけに今回の辞任に、「潔い」「トップふたりが辞任するほどの事ではないのでは」との声が上がっています。

が、わたしは犬伏氏の二度と不祥事を起こさないという強い姿勢からして、その思いが届かず、いや踏みにじられてしまったことから、辞任しなくてはまた繰り返すとの思いが強かったのではないかと思います。犬伏氏は会見で「組織の隅々まで(コンプライアンスの徹底が)浸透し切れていなかった。もう一度やり直したい」と悔しさをあらわにしましたが、徹底できなかった自分の不甲斐なさで胸うちは忸怩たる思いで一杯ではないかと思います。

犬伏氏が、ここまで徹底してコンプライアンスに取り組んできたのは、神戸製鋼所が何度も不祥事を繰り返してきたからです。平成11年11月の元専務らによる総会屋への利益供与事件、16年10月の橋梁工事の談合事件、18年5月の加古川製鉄所でのばい煙データ改竄事件、そして今回です。2年に一度は不祥事が起きている勘定です。

企業倫理綱領には、「経営トップによる取り組みに関すること」が定められ、こう明記されています。

「企業倫理綱領に反するような事態が発生したときは、強いリーダーシップを発揮しなければなりません」「事案によっては、経営トップとしての責任を十分認識した上で、自らに対し厳しい処分を課すこととします」

犬伏氏は社員が背いた企業倫理綱領を、自らは率先垂範することにしたのではないでしょうか。いわば社内向けの最後通牒なのかもしれません。犬伏氏はメッセージと引き換えに道半ばの不祥事による引責という不名誉な道を選んだと思います。

 

記者は企業に対して好き嫌いといった感情をあまり持つべきではないと思っていますが、わたしは神戸製鋼所に対して、どこか愛着を持ってきました。

故郷の下関市に神戸製鋼所の長府製造所があったこともありますが、担当記者になって取材を通じて知り合った何人かの社員らの人柄に親しみを持ってきたこと。その社員らと一緒に何度か同社のラグビーを観戦に行ったことがありますが、これまでの深刻な不況時にもラグビーを懸命に支え続けてきた企業文化。そして、なによりも阪神大震災で1020億円もの被害を受け、神戸製鉄所は全面操業停止に追い込まれながらも、全社一丸となって危機を乗り越え復活させたエネルギーをみせてくれたこと、などなどからです。

 組織の隅々にまでコンプライアンスを周知徹底することの難しさは分からないでもありません。が、創立から104年を迎え、日本の鉄鋼業界の一角に位置してきた神戸製鋼所がいつまでも不祥事企業のレッテルを貼られたままでは寂しすぎます。トップ二人が辞任した今回の不祥事で終わりにしてほしいと願っています。

 

 

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「派遣切り」を減らすには…。

2009/01/15 14:51

 

 派遣切り」という言葉を、いつから使い始めたか定かではありませんが、どうも言葉は嫌な表現だと感じています。だからといって、いま製造業への派遣労働を全面禁止しようとの意見が高まっていますが、わたしは全面禁止のメリットよりもデメリットのほうが多いのではないかと受け止めています。むしろ派遣労働者の立場を理解して、もうすこし働く環境の整備をすることが望ましいのではないかと思っています。

 

 派遣労働はさまざまの立場の人に、それぞれの能力をもっと発揮してもらうことを目的に、昭和61(1986)年に労働者派遣法が施行されました。当初は通訳など専門的な業務だったのですが、段階的に業務も広がってきました。そのおかげで正社員とパートだけだった雇用形態に派遣が加わって多様な働き方が生まれ、さまざまな業種で雇用のミスマッチが解消されることになったことは歓迎すべきことだと思います。

 たとえば、一時的な労働を希望する人、あるいは子育てに一段落つき、もう一度働こうとする女性、配偶者の関係上、転勤地で短期間働く場合などです。ある意味、柔軟な雇用政策ともいえるのです。

 こうしたメリットがあるからこそ、いま派遣労働者は321万人(2006年、このうち製造業への派遣は約50万人)にも上るとされています。労働派遣法改正によって適用対象業務を原則的に自由かした平成11(1999)年に派遣労働者は107万人だったことを考えると、わずか6年で200万人以上も増えているのです。

製造現場では直接雇用の期間工などを派遣労働に置き換えたケースもあったとみられますが、平成20(2008)年11月の完全失業者数(季節調整済)は263万人ですから、単純な比較ですが、それに近い労働者が派遣によって雇用された可能性があるということになります。前回のブログでも触れましたが、もしも派遣労働が認められていなかったら、現在の失業者数はかなりの人数が積み上がっていたのではないかと推測します。

 名古屋に派遣の雇い止めされた労働者が集まっていることが話題になっていましたが、中部経済連合会の川口文夫会長が「この地域の製造業の国際競争力が強かったのは、柔軟な雇用政策があった面は否定できない」というように、自動車産業を中心に中部経済を支えたのは、こうした雇用政策だったことは否めません。

 

 その派遣労働について、景気悪化とともに企業がいつでも解雇できるといった柔軟さを逆手にとって、また人件費が安くつくことに、経営者が都合のよい雇用の調整弁としか考えていないとして、強い批判を浴びています。厚生労働省の調査によると、失職する非正規社員の7割が製造業の派遣労働者であるため、とくに製造業への派遣労働の全面禁止を求める声が高まっています。

 いわゆる「派遣切り」が相次ぐのは、平成14年2月から19年10月まで戦後最長となる景気拡大期に、企業が派遣労働者の採用を増やしたものの、この急激な景気悪化に生産調整をせざるを得なくなり、派遣労働者を中心に雇用調整を急いでいるのが、いまの姿ではないかと思います。

日本は雇用の流動化が進んできているとはいえ、なお終身雇用制度が根強く残るうえ、むやみやたらと正社員を解雇できない仕組みになっています。とくに労働組合が機能している製造業では、なおさら正社員を解雇しにくいのです。労働組合との関係以上にメーカーは社員を身内、家族の一員のように位置づけてきたので、正社員を解雇することは可能な限り避けてきました。

 ところが、派遣労働者に対しては雇用契約上、雇い止めすることができるわけですから、生産縮小や効率化を図るうえで、真っ先に派遣労働者がターゲットとなっているのです。

 十分に働けるにもかかわらず、派遣労働は最長3年といった雇用契約の制約があることを知って、自ら派遣労働者を選択した人は雇い止めに対して一定の覚悟があるべきだと思います。労働派遣では正社員に比べ人間関係が煩わしくないという理由で選択しているのなら、ある程度、雇用契約が切れたら、職を失うというリスクをあらかじめ考慮しておくべきだと思います。

ただし、家庭の事情や体力の問題などで、何らかのやむを得ない理由で派遣労働者を選択した人もいるわけですから、企業サイドはもう少しやさしい配慮も必要だとも感じています。 

 「自分の人生観、価値観で正規の社員をむしろ忌避してあえて派遣社員になった人もいる」「そういう人生の選択のためにも、それを保障する制度をつくるべきだ」(東京都の石原慎太郎知事)との意見も頷けます。

 

さまざまな立場の違う人がいることを踏まえたうえで、製造業への派遣を全面禁止の是非について考えてみました。

 全面禁止すれば新たな派遣切りにつながるのではないでしょうか。

この景気悪化のなか、じっと我慢を重ねている企業は新たな雇用も抑制して、派遣労働が正社員にとって代わる可能性は少ないと思われます。景気がよくなっても正社員としての採用を抑制するはずです。つまり、失業者が増えるだけではないかと思います。

企業が安い労働者を求めて海外進出を図ることが増えると思われますし、海外から日本に進出する企業が減少すると推測します。すると経済に悪影響を及ぼしかねません。

 製造業への派遣労働を全面禁止するのではなく、雇用環境を整えることを考えてみてはどうでしょうか。

 まず、正社員の非正規社員の雇用条件の隔たりを、もう少し縮めることは必要だと思います。与謝野馨経済財政担当相が「同じ職場で、同じ時間、同じ労働をして、賃金がこんなに違うのは社会的に正しくない」と指摘しているように正社員に比べて非正規社員の賃金は低く、日正規社員の賃金は伸び悩んでいるのが実態です。派遣労働者であっても同一労働同一賃金が原則であることだと思います。

 急な派遣労働者の雇い止め、いわゆる中途解除について、もっと厳しくすることが必要だと思います。現在、派遣先の企業が中途解除する場合は、少なくとも30日前に派遣元の企業に予告することが求められているのです。もしも、予告がなければ損害賠償請求できるのですが、これを規定しているのが厚生労働省の指針だけですので、実効力がないのです。もっと厳しくするため、法制化して、しかも規定破りに対しては、罰則も設けるくらいにするべきではないでしょうか。

 また、派遣労働者に対して次の職を探すための斡旋や、その支援、職業訓練の場をつくるなど職場復帰もしやすい仕組みを作ることです。そのために、住宅確保のため、空いているのならばそれまで働いていた企業が社宅を一定期間、貸すことも考えてもいいのではないかと思います。

 仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ登録型派遣を、ある程度の実績を積んだことを条件に常用型派遣に切り替えることにすれば、安定した職に就くことができるはずです。企業も新規採用、中途採用をするのなら、非正規社員を優先させる、といった配慮があってもいいのではないかと思います。

 労組になかでも、「派遣労働者のなかには多様な働き方を求めている人も多く、尊重すべきだ」(電機連合の中村正武委員長)として、派遣労働の全面禁止に反対の指摘もあります。 労働派遣のデメリットばかりを考えずに、労働者にとって働きやすい場所を増やすにはどうしたらよいかを考えることが必要ではないかと思います。

 

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大恐慌、それでも、失業者数は多くはない。

2009/01/07 17:35

 

「今年は大変な年になります」

「激動の時代です」

年賀状の一言も、新年の挨拶でも、厳しい経済環境に陥ったことを悲観するコメントが多いのは仕方がないのかもしれませんが、大阪にはまだまだ不況を笑い飛ばばそうとする元気がまだ残っているように感じます。

5日、大阪府と大阪市、在阪経済4団体の大阪会では、こんな声が聞こえてきました。

「100年に一度のだといったやつはどこのどいつかしらんが(注、米連邦準備制度理事会FRBの前議長であるアラン・グリーンスパン氏です)、そいつは100年前を知っとんのか」

「知らんのやったら、せめて50年に一度といわんかい」

「終戦直後のほうが、よっぽどひどかった」

景気は気です。元気をだしましょう。元気がないなら、空元気でもいいんです」

「谷深ければ山高し。きっとすごい好景気が来ますよ」

「いまの世の中は大転換の時代。これだけ急激に落ち込んだら、急激に回復するに違いない。3カ月でここまで悪化したのだから、今年の夏には回復するはずです」

産経新聞大阪本社の経済部記者が関西の経営者に不況脱出のキーワードを聞いたところ、なかなかユニークな回答が集まったのですが(6日付の大阪発行版の経済面に一覧表を掲載しています)、なかでも京阪電気鉄道の佐藤茂雄CEOが挙げたのが「笑」。理由は「笑いで不況を吹き飛ばすくらいじゃないといけない」というものでした。

期待半分、いや淡い期待だけかもしれませんが、不況、不況というだけのなかで、こうしたコメントを聞いていると明るい気持ちになってきます。

そう思っていると、ちょっと気になる指摘がひとつあったことを思い出しました。

 「新聞は年末年始、派遣切りの話題ばかりなのは分からないでもないが、まるで雇用情勢は最悪で、日本中に失業者があふれているみたいなイメージを強めているけど、5、6年前のほうがもっと多かったのではないか? 調べてみたら」

 で、調べてみました。

 完全失業者数(季節調整済)は平成20(2008)年11月は263万人。

 過去のデータをさかのぼってみますと、もっとも失業者数が多かったのは14年8月の367万人です。昨年11月に比べて100万人も多いのです。

 データをみているとさらに驚きました。なんと、10年3月から19年4月までの間、260万人以上なのです。多いときは350万人前後(13年8月ー15年7月の2年間)で推移しているのです。「平成不況」(4年から13年まで)が底を打って、14年2月から始まった、いわゆる「いざなみ景気」に入ってしばらく経っても、なお失業者はいまより多かったのです。

 厚生労働省の調査によると、3月までに失職する非正規労働者は約8万5000人にのぼるそうです。それでも、300万人にまで届きません。もちろん、これから非正規労働者だけでなく、企業は新規採用や再雇用を抑制したり、正社員のリストラをするはずですから、正社員の失職も増え、失業者はどんどん増えていくかもしれません。こうした失業者数や失業率のデータは遅行指数といって、経済の実態に遅れて顕著になってくる傾向が強いものですから、半年後、1年後に300万人を超える可能性はありますが、それでも過去のデータと比べて、100年に1度の恐慌と思えるような失業者数ではありません。

 なぜでしょうか。企業ができる限りの雇用を守っていること、また、いま話題の派遣労働法が関係しているのではないかという気がします。次回、その派遣労働法について考えてみたいと思います。

 

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大阪の新年。

2009/01/06 17:47

 

 1月2日から出勤だったので、わずかな年末年始を充実したものにしたいと思い、いつもながら紅白歌合戦を見ながら酒を飲んで、いつのまにか酔っぱらって寝るというパターンを止めようと思い立ち、大晦日の夜、大阪市徳井町にある山本能楽堂に出かけてみました。

午後9時半からの「初心者のための上方伝統芸能ナイト・年越し特別編」があると聞いていたからです。大阪市内も底冷えする夜でしたが、山本能楽堂は観客で一杯でした。

 芸能ナイトは毎月第1、第3土曜日の午後7時から1時間40分ほど開いているもので、落語、文楽、狂言、能など伝統芸能が15分から20分ずつ楽しめる企画です。大阪商工会議所が大阪市などと推進しているもので、山本能楽堂の観世能楽師、山本章弘さんが中心になって、企画・運営しています。

大晦日は、その特別編。午後9時半から山村若氏の上方に始まって、内海英華さんの女道楽、桂ちょうば氏の落語、島之内のたに川さんのお座敷あそび、豊竹英大夫氏の素浄瑠璃、そして山本章夫氏らの能です。これほどの伝統芸能に間近に接することができるので、かなりのお得です。

このなかで、わたしは女道楽を初めて知りました。単独か複数で三味線や唄、踊りを行う演芸で、いわゆる色物のひとつだそうです。この色物というも落語の寄席で出演者を書いた番組表には、落語の出演者は黒色ですが、そのほかの出演者を朱色で書いたことから、落語以外の芸能を色物と呼んだそうです。大阪では大正期にさかんだったものの、次第に漫才や漫談に吸収され、絶え絶えになっていたのを内海英華さんが復活させたそうです。

こうしたことも分かりやすく説明してくれる解説書がついてくるうえ、司会者というか、進行係である桂ちょうば氏が、それぞれの合間に親切に笑いを取りながら解説してくれるので、初心者にはやさしく、リラックスして参加することができます。

ユニークなのは、このなかで体験コーナーがあることです。実はわたしは、今回で2回目なのですが、初めて観にいったとき、そんなに手を挙げる人はいないだろうから、話のついでに参加してみようかと待ち構えていたら、びっくりした経験があります。

「さて、体験したい人」と司会者が呼びかけるやいなや、ぱっと多くの観客が手を挙げたので、気負い負けして出遅れてしまったのです。しかも、ほとんどが女性ばかりでした。3人が指名され舞台で文楽の曲をうなるのですが、素人なりに一生懸命に演じて観客を大いに笑わせるのですから、大阪人のノリに関心した記憶がありました。

さて、大晦日の体験コーナーはお座敷遊び。女性は遠慮するかなと思いながらも、真っ先に手を挙げたら、やはり女性も何人が手を挙げていたのですが、当ててもらいました。

お座敷遊びは、宴席の行われる料理屋などの座敷で芸妓と唄やゲームを楽しむことです。もちろん経験があるわけではありません。この機会とばかりに、スタッフに借りた足袋に履き替えて舞台に上がりました。

この日は屏風を隔てて、芸妓さんとそれぞれが分からぬように、虎、兵隊、おばあちゃんの格好をして、踊りながら屏風から出てきて、じゃんけんのように勝負するという遊びです。それぞれの真似方や、おあいこになるだけで、笑いの渦に包まれるというなかなか楽しいゲームでした。

 紅白歌合戦を見ることはできませんでしたが、ちょうど新年を迎えたときは、能の時間でした。能楽は650年前の室町時代から脈々を受け継がれ、世界最古の演劇といわれているものです。日本で最初にユネスコ世界無形遺産の指定も受けています。

 能は想像を楽しむ芸能といわれているそうです。この日の演目は「翁」。天下泰平、国土安穏を祈祷する神聖な儀礼曲です。祭礼の礼服をまとったに、ずぶの素人のわたしですが、そのおごそかな空気につい引き込まれ、新年を迎えるにあたり、とても静謐な気持ちになっていきました。

 笑いと舞のすべての芸能が終わったら、時刻は元旦の零時半。

最後は出演者による鏡開きがあって、観客も一緒になってお酒を飲んで帰りました。山本能楽堂は、1927年の創立で、残念ながら最初の舞台は戦争によって焼失していますが、1950年に再建され、2006年には国の登録有形文化財になっており、その舞台の重厚な雰囲気が味わえました。

こうしたところで大晦日を楽しむ大阪人はなかなか粋ですね。

 

 

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 「縮み」の連鎖を断ち切るには。

2008/12/24 19:16

 

 景気悪化から不況、そして危機、恐慌という表現が当たり前のように飛び交う時代になりました。

 たしかに日本は今年の夏以降、景気悪化局面に入ったとみられ、発表される経済データは深刻なものばかりです。GDPの6割を占める個人消費は冷え込み、企業の業績は下方修正や減収減益が当たり前となり、ボーナスカットや雇用調整など日本を代表する大企業にリストラの風が吹き荒れ、倒産も相次ぎ、かつて経験したことのない厳しい経済環境に入ったのかな、と実感せざるを得ません。

 ただ、ここまで深刻な状況に陥ったのは、実体経済以上に企業も個人もマインドが急速に冷え込んだことが一因にあるのではないかと見ています。いわゆる「縮みの連鎖」が予想以上に拍車をかけた側面もあるのではないでしょうか。

 

 「100年に一度の危機」

連邦準備制度理事会FRB)の前議長であるアラン・グリーンスパン氏が指摘したことから、世界中で大恐慌に入るとの見方が広がっています。

ただ、この表現はグリーンスパン氏が8月初めに英紙に寄稿した際に使ったもので、その後、9月18日のリーマン・ブラザース破綻など一連の金融危機やビッグ3危機を踏まえているわけではないのです。ブッシュ政権下で歴史的な低金利政策で景気を回復させ、「マエストロ(巨匠)」と呼ばれたグリーンスパン氏ですが、その裏づけが何か確たるものがあるわけでなく、つまり、グリーンスパン氏の「読み」でしかありません。

100年に一度かどうか、実際にそうである可能性は高いのかもしれませんが、それは100年後になってみないと分からないだろうと思わないでもありません。

しかし、この言葉が新聞に踊らない日はないといってもいいくらいで、それだけでこれはもう大変な時代に突入したと、誰もが萎縮してしまいます。当然、台風が来る前に雨戸を閉めるように、庶民はしばらく財布の紐をしっかり締めなくてはと考えてしまいます。

すると、モノが売れなくなり→企業の収益が吹き飛び→給料が減り→さらに買い控えが広がり→さらにモノが売れない―という負の連鎖が起きているのです。なかには安売り競争に走り、経営体力のない企業は破綻していきます。

 とくに生活必需品以外は影響をもろに受けます。

代表格は自動車です。故障さえなければ、買い替えしなくてもいいわけですから、だれも新車を買わなくなります。もうしばらく、いまの車を我慢して乗ることしようとか、車を購入しようと思っていてけど、レンタカーで我慢して購入はもう少し先延ばししようと、となります。11月の新車販売(軽自動車を除く)は前年同月比27・3%減と11月として過去最大のマイナス幅を記録しましたのは、こうした背景があるのです。

規模が大きいほど、その影響は大きくなると予想されます。トヨタ自動車が最高益から一転して赤字に転落するのは、こうした状況があります。

そうなると基幹産業である自動車産業は、関連産業を含めると労働者数は500万人に及ぶほど裾野が広いため、その影響は計り知れないものがあります。

不動産はもとより、家電製品やIT関連商品、衣服なども同じです。新しい薄型テレビもパソコンもスーツも買い控える傾向が強まります。11月の全国百貨店売上高も前年同月比6・4%減で15年ぶりの減少幅です。これでは年末商戦も正月商戦も、がた減りするとみられています。

そして、日本で最も収益を上げるトヨタ自動車や、一流企業のソニーがリストラをせざるを得なくなります。すると、多くの経営者は「トヨタがリストラをするのだから」と言い訳にしてリストラに走ります。いや、むしろ「トヨタがやっているのに、わが社はこのままでいいのか」と、あわててリストラをする企業もあるかもしれません。

 当然のことながら、多くの企業経営者は防衛策に走ります。それも最悪のシナリオを想定して、です。

 おおよそ、企業の行動パターンとして収益があると①設備投資②内部留保③株主還元 ④有利子負債の還元⑤研究開発費⑥従業員への還元-の順番で使うとされています。これ

景気悪化となると逆のパターンになります。つまり最初に従業員の給与を減らしてリストラを断行して、研究開発費を削り、減配して内部留保を取り崩し、設備投資を抑制する、といわれています。

いまは、この初期段階から減配へ向かっているように見えますが、このままだと、縮みの連鎖がスピードを速め、次第に景気悪化は不況に、そして実際に100年に一度の経済危機、恐慌に陥ってしまうのではないのかと心配が募ります。

 「縮みの連鎖」を食い止めなければ、景気を好転させることは難しいとみられていますが、有効な手立てがあるわけではありません。麻生太郎首相が国民の財布を豊かにして、消費を喚起させようと来年度予算では相当の借金をして歳出を拡大したり、定期給付金を始めとした対策を打とうとしていますが、経営者や個人のマインドに火が付かなければ、空回りするだけです。

 ただ、これがなければ経済は好転しないと言われているものがあります。

伊藤忠商事の小林栄三社長がこう話していました。

「いまの状況を打開するには日本を明るくすること。景気と天気はどうにもならないが、元気だけはどうにでもなる。いま、求められるのは元気さです」

厳しい経済に直面して、だれもが安閑としていられないと思いますが、元気を振り絞って、日本経済の底力を見せたいところです。

 

 

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たかが1円、されど1円-パナソニックの深謀遠慮。

2008/12/20 14:35

 

 1円の上積みで、ゴールドマン・サックスが一転して、三洋電機株の売却に応じることになりました。これでパナソニックによる三洋電機のTOB株式公開買い付け)の価格は1株131円で成立する見通しになりました。100年に一度といわれる金融恐慌で追い詰められたゴールドマンが名門投資銀行のプライドをかなぐり捨てて、忸怩たる思いで決断した姿が浮かび上がってくるような決着でした。

 

 ゴールドマンの当初の希望売却価格は250円前後だったとされます。パナソニックと三洋電機によるTOBによる買収が公表された11月7日終値の203円です。この株価を元に算定すれば、250円前後は法外な額ではありません。

 ところが、パナソニックがぶつけてきたのは、なんと120円。半値以下です。三洋電機の企業価値、資産価値などから弾き出した額ですが、この予想外の超低価格にゴールドマンは「不当に低い」と憤り、交渉打ち切りを通告するほどの強硬姿勢をみせました。

 そこでパナソニックは譲歩して10円アップの130円を再提示します。当然、ゴールドマンはなお拒否です。強硬姿勢を貫けば、三洋電機を買収したいパナソニックが10円刻みでアップしてくると踏んだのではないか、と考えたのではないかと思います。

ところが、パナソニックはそこから一切、動かなかったのです。

パナソニック関係者によると、「これ以上、三洋電機に出せない。もし、ゴールドマンが乗ってこなければ、三井住友銀行と大和証券SMBCの株数だけで十分。いや、最終的には破談で三洋電機を買収できなくてもパナソニックは一向に困らない」と話していました。

130円でも3社の株数全部70%を購入すると5500億円超が必要です。パナソニックにしてみれば、これが上限だったと判断したのかもしれません。一向に交渉価格を上げる姿勢をみせなかったようです。

こうなるとゴールドマンの戦術は失敗に終わります。

しかも、16日にゴールドマンが発表した9-11月期決算は1900億円の赤字。四半期ベースで最終赤字に転落したのは1999年の上場来初めてのことです。勝ち組とされてきたゴールドマンにとっては深刻な事態です。2500人の人員削減を実施し、ブランクファイン最高経営責任者も68億円もあったボーナス返上を余儀なくされています。

 ゴールドマンは設立1869年の名門かつ世界最強の投資銀行と位置づけられてきました。総資産は約90兆円を誇り、世界の金融界に君臨してきたのですが、金融恐慌のなか、もはやパナソニックの強硬姿勢の前に、一刻でも早く決着というのが本音だったのではないでしょうか。

ですからパナソニックとしてはゴールドマンに敬意を示すため、最低限の「1円」の上乗せをしたのです。これでゴールドマンは白旗を揚げたのです。

ゴールドマンは「投資銀行として時価以下での売却でできない」と言っていました。当然といえば当然です。三洋電機の株価は低迷したものの141円(最終決着をマスコミが報じた18日の終値)。市場より安い131円は屈辱的な価格です。その1円は全株に換算すると17億8500円。返上したブランクファインCEOのボーナスの4分の1にしかなりません。

とはいえ、2006年3月にゴールドマンが購入した三洋電機株は1株70円で、1250億円の投資でした。131円だと2340億円になります。3年間で1090億円の儲けで、投資利回りは年率20%超。投資ファンドの利回りは20%程度ですから、ゴールドマンにしても決して悪くはないはずです。

たかが1円ですが、されど1000億円の売却益を手にするわけですから、金融恐慌のなか満足するしかないのではないでしょうか。

 

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不況と過去のツケに翻弄される麻生首相。

2008/12/12 18:07

 

麻生太郎首相が意欲を示し、指示していた「3年後の消費税増税明記」も、「たばこ増税」も、自民党税制調査会にいとも簡単にあっさり蹴られてしまいました。

 そこには首相の威厳はなく、ここまで面子をつぶされていいのだろうかとも思いますが、麻生首相にしてみれば景気浮揚のため財政出動しようにも、お金がまったくないのですから、なんとか捻出するしかない、という思いだったのではないでしょうか。

 財政規律の旗をなんとか振り続けようとすると3年後の消費税増税明記も、たばこ増税も、やむを得ないと考えたのだと思います。

 (これからますます景気悪化することを考えれば、消費税増税の時期を明記するのは国民感情を逆なでするため、せめて経済情勢を鑑みて経済成長率1・5%超となることなどの条件を定めればよかったのでは思います)

 これから景気対策の財源や来年度予算の財源、そして2009年4月からの基礎年金の国庫負担を3分の1から2分の1に引き上げるための財源にしても、どう考えていくのでしょうか。いわゆる埋蔵金の活用というものの、それは安定財源ではありませんから、このままだと将来的に国の財源の手当てがますます苦しくなって一段と赤字国債や隠れ借金に頼らざるを得ないことになり、財政再建はますます遠のいていくことになりそうです。

その責任も麻生首相が負うことになるわけですが、わたしはやや同情しています。

というのは、こうした財政がにっちもさっちもいかない状況に追い込まれたのは過去のツケが回ってきたことが大きいと思うからです。

 過去のツケとわたしが考えるのは、以下の3つがあります。

 ひとつは毎年、旧態依然とした予算編成に安住してきたことです。

予算は毎年夏に概算要求基準(シーリング)を決め、その方針に従って8月末に各省が財務省に予算要求をします。それをもとに年末にかけて財務省が査定をして、要求を認めていく段取りです。

シーリングというのは、国の予算を編成する際に分野ごとに上限を設ける仕組みで、各省の要求額の天井を設定することからシーリング(天井)と呼ばれているものです。つまり、この枠内で要求するわけですから、野放図な要求はないものの、毎年、各省のシェアはほぼ同じになります。メリハリがない予算になってしまううえ、来年度の予算を削られないように予算を使い切るため、これが無駄な道路や空港、ハコモノを多くつくる遠因になったのです。当然、財源は建設国債。借金です。

 これらを一般会計と呼び、政府は内容について説明をしてくれます。毎年12月20日前後に新聞で財務省原案としてたっぷりとスペースを取って掲載しますから、チェック機能が働きます。

その一般会計でも無駄遣いが多く指摘されてきたのですが、もっと問題なのは特別会計です。これについては、ほとんどブラックボックス化してきました。塩川正十郎氏が財務相時代に、「母屋(一般会計)でおかゆをすすっているのに、離れ(特別会計)ではすき焼きを食っている」と指摘してから、一般的に問題視されるようになったのですが、長くこの特別会計にはメスが入らなかったので無駄遣いが多分にあるとみられ、税金が効率的に使われてきたのか、疑わしいのです。

もうひとつは与党が徹底的な行財政改革を怠ってきたことです。

長く政官財は「鉄のトライアングル」といわれるほど結束してきました。とくに政治家は政策立案を官僚に依存してきたため、官僚に遠慮しがちで、そのおかげで官僚は巨大な権限を持ち続けてきたのです。その官僚の抵抗は強く、血を流すような行財政改革はいつも掛け声倒れで、無駄を排除することはできなかったのです。

 そして、3つ目は長く消費税の増税論議を封印してきたことです。

 政治家は財政再建の切り札は消費税であること、とくに基礎年金の国庫負担引き上げの安定財源は、消費税増税を充当するしかないことを知っていたはずですが、そのことから逃げてきたのが実態でした。

徹底した行財政改革に踏み切ることができずにきたことや、景気も回復感なき回復だったことから不安が常に付きまとい、消費税増税論議になかなか踏み切れずにきたのです。本来なら一昨年ころから徹底した政府のリストラをして、消費税増税論議を始めていれば、いまのような状況には陥っていなかったのかもしれませんが、もはや時すでに遅しです。

 こうした過去のツケがたまるなか、景気悪化すれば、さらに借金を重ねることは自明の理です。その批判を一手に受けることに、麻生首相にしてみれば忸怩たる思いが募っているのではないでしょうか。

 

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財政出動「特別枠」はパンドラの箱?

2008/12/05 16:17

 

財政出動のパンドラの箱を開けてしまったのではないでしょうか。

 財政再建を目指した「骨太の方針」が「骨抜きの方針」になり、小泉内閣以来、堅持してきた歳出削減路線を蔑ろにするような動きが顕著になってきました。

 その典型例が「特別枠」を設定して、そこで公共事業費をどんどんつぎ込むことが浮上していることです。

自民党幹部らが「特別枠を大いに評価する」と打ち上げるなど現実味を増してきているようですが、こうしたやり方は「抜け穴」としか思えません。一応、本予算では財政規律を維持していると体裁だけを取り繕うというもので、実態は借金まみれの男が妻の名で借金を重ねるようなものです。国民の多くはいくら特別枠と形を変えても国のお金が使われることは分かっているはずですから、わたしには子供だましのようなテクニックに映ります。

 細田博之自民党幹事長は「借金を増やしてでも対応しなければならない。これが本当の景気対策でなくてなんだろうか」との強調しているようですが、そうであるならば、堂々と骨太の方針を撤廃して、本予算で実施すべきだと思います。これから本予算に組み込むとなれば、技術的に難しさが伴うと思われますが、そのほうが予算の透明性が増すはずです。

わたしが特別枠に関して問題と感じるのはふたつあります。

ひとつは、効果的なお金の使い方をしないと、いつか繰り返した無駄遣いになるだけでではないかということです。

すでに1次補正や2次補正で公共事業を上積みしているので、実質的には骨太の方針も、また概算要求基準(シーリング)の堅持であろうが維持でもほとんど意味が薄れていますが、特別枠というような形を取ると無秩序状態に拍車がかかるような気がします。

特別枠の規模は3年間で10兆円とか、30兆円との声が上がっているようです。となれば選挙をにらんだ政治家がわれ先にと地元への利益誘導に走り、税金の大盤振る舞いが横行するのは間違いありません。野放図な財政出動は禍根を残すことにならないか、と思わざるを得ません。

もうひとつは財源の手当てもないままに、財政出動を容認してしまうことです。これでは国の借金が増えるばかりです。

 たばこ増税といっても、1本3円値上げ(1箱60円)といっても1千数百億円です。ないよりはいいですが、焼け石に水です。埋蔵金といっても1年限りのものだったり、詰まるところ借金に変わりはないものだったりです。

赤字国債を発行するしかないのですが、借金を重ねることでいいのかどうかです。

 政治化のなかには、ブレーキをかけようとする声もあります。

 財政規律派の与謝野馨経済財政担当相が「(財政規律の)旗は破れ気味、汚れ気味だが、立てていく必要がある」と意地をみせ、舛添要一厚生労働相が「天からお金は降ってこない。税制改正を含めて目に見える形で具体的な財源がないとだめだ」と筋を通しています。が、財政規律はひとたび崩れだすと、とめどもなくなるものです。

 国の借金が増え、財政が悪化することが、なぜ問題なのか、ピンとこないかもしれませんが、わたしたちの生活にも大きな影響を与えます。

 国債残高は年々増え続け、平成20年度末で553兆円にものぼります。赤ちゃんも含めた総人口で割ると国民一人当たり433万円です。債務残高の対GDP比をみると日本は170・9。イタリアが117・1、フランスが71・0、ドイツが64・2、米国が65・8、英国が49・8ですから日本は先進国のなかでも最悪の水準なのです。

 これだけの借金があれば、当然のことながら毎年、その返済に追われます。それだけ予算のなかから社会保障費や教育費に回すお金が少なくなるのです。国債金利が上昇することにもなりかねず、そうなれば住宅ローンの支払いの増加などにつながります。

 わたしたちの子供や孫の世代が借金を返すことになるわけですから、その返済に苦しみ、いま以上に国の予算のうち使えるお金が少なくなることも考えられるのです。

 こうしたことから、わたしは国の借金は可能な限り、増やさず、減らすことを考えるべきだと思います。

 

 ただ、ここまで景気が悪化して、国民の生活が揺らぐ事態になったことを踏まえると、財政規律を棚上げするしかないとの声があがるのは、無理かならぬ面もあるとも思っています。借金を重ねてでも景気対策をしなければならないような事態に陥ったのは、過去の政治のツケが回ってきたからです。そのことは次回、書きます。

 

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麻生内閣支持率急落で経済も危険水域に?

2008/12/02 13:31

 

このところの定額給付金をめぐるダッチロールや第2次補正予算提出の先送り、そして度重なる失言問題で麻生内閣の支持率低下は予想されていたけれども、ここまで落ち込むと思わぬほどの「危険水域」です。

「経済は麻生太郎が最も、いまの政治家(のなか)では使える」と言っていたにもかかわらず、その打ち出す経済対策に疑問符が付きまとっていますが、この支持率のままではこの先、政策立案力や遂行力までもがもっと低下するのは避けられそうになく、ますます景気悪化を食い止めることができないのではないかと、不安になってきました。

 

 産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)の世論調査によると、麻生内閣支持率は27・5%と9月末の44・6%から一気17ポイントも下落し、政権維持ラインとされる30%を割り込んでしまいました。不支持率は58・3%。急速に批判が高まったという印象です。

 最も衝撃的なのは「麻生太郎首相と小沢一郎氏のどちらが首相にふさわしいか」についての結果です。「麻生首相が31・5%、小沢氏が32・5%」となりました。麻生氏にしてみれば、小沢氏に対して最も大差をつけ、胸を晴れた数字が「党首力」だったのですが、僅差ですが現職の首相が逆転されてしまったのです。過去にそのような例があるのかどうかわかりませんが、自民党内からは「最後の砦が崩れたのではないか」との声も上がっているようです。

 12月1日付の日本経済新聞社の世論調査にでも、麻生内閣支持率は17ポイント低下して31%。これに対して不支持率62%。次の首相にふさわしいのは麻生首相が17%、小沢氏が17%と拮抗し、ほぼ同じような結果となっています。

 麻生政権は危険水域にもはや突入したといえるほどです。

「選挙の顔」として選ばれた麻生首相ですが、この数字では選挙に勝てるはずはありません。11月28日の党首討論で、麻生首相は、小沢氏の解散を求める質問に「世界中が(金融危機の)対応に必死になっているなか、政治空白をつくるのは第2の経済大国としてすべきことだとは思わない」「景気を考えるなら平成21年度本予算が一番肝心だ。1次、2次、本予算の3段ロケットできちんと対応すべきだ」と反論していました。

 が、国民の多くは麻生首相が解散、総選挙に打ってでないのは、いまのままでは自民党が勝てないと麻生首相自身が分かっているから、と判断しているはずです。となると、来年度予算が成立する来春か、あるいは来年9月の任期満了まで麻生首相は解散しないのではないか、とも思えてきますが、そうであれば、なおさらリーダーシップが取れないまま政権の地盤沈下が進んでしまうのではないでしょうか。

 そのかなで、もっとも懸念するのは、もはや政策立案力、そして遂行能力も危うくなってしまいかねいということです。

 すでに「(首相の求心力は)ない。いま、人心は千々に乱れている」(渡辺喜美・元行政改革相)と麻生首相批判が自民党内からも公然と上がっているようですが、一枚岩でなければ大胆で効果的な政策はまとまりません。ねじれ国会のなかで法案成立に時間がかかるのに、こうした政府与党内の足並みがそろっていなければ、実行に移すのにもかなり時間を要します。

すでに第一次補正予算にしろ、定額給付金を含む第2次補正予算にしても、これほどまでにごたごたしてしまえば、景気浮揚策としての即効性が薄れ、しかもインパクトもなくなっています(定額給付金にいたっては、世論調査で「景気対策として適切だと思わない」が76・9%にものぼっていました)。

100年に一度の金融災害が襲ってくるなか、すでに下降局面に入った日本経済ですが、このままではその坂道を転げ落ちてしまうのではないかとの不安が募ってきます。

 解散もできず、効果的な経済対策も打てないことになれば、日本は厳しい状況になってしまいかねません。日本経済が危機的な状況になる前に政治危機に陥り、それが一段と日本経済の危機を増幅させてしまうのではないかとかなり心配です。

 

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