1箱20本入り300円のたばこを、たばこ税の値上げによって1000円にしようとの声が強まっています。
3倍以上の値上げというのは、商慣行からいえば考えられないものです。が、わたしが喫煙しないこともありますが、いまの国の財政事情や海外のたばこの値段との比較、たばこの害などを踏まえると、このアイデアには賛成です。
ちなみに17日付の産経新聞の世論調査にでは、「たばこ1箱1000円」に賛成は49・6%、反対が41・2%でした。
たばこの煙には多くの有害物質があります。たばこの包装(パッケージ)そのものに、その危険性を明記しています。
「喫煙は、あなたにとって脳卒中の危険性を高めます。疫学的な推計によると、喫煙者は脳卒中により死亡する危険性が非喫煙者に比べて約1・7倍高くなります」
「喫煙は、あなたにとって肺がんの原因のひとつになります。疫学的な推計によると、喫煙者は肺がんにより死亡する危険性が非喫煙者に比べて約2倍から4倍高くなります」
「人により程度は異なりますが、ニコチンにより喫煙への依存が生じます」
「妊娠中の喫煙は、胎児の発育障害や早産の原因のひとつになります」
などなどです。
日本で販売されているたばこの包装には、喫煙の健康へのリスクについて適切に情報提供されるべきであるとして、たばこ事業法に基づく財務省令によって「健康注意文言」を表示することが義務付けられています。8種類の文言から包装の裏表に2種類を交替で表示することが義務付けられているそうです。
有害であることを売るほうも買うほうも分かっている商品が、だれもが購入できる価格であるのは、果たしていいのかどうか、疑問です。
有害であることについて、日本たばこ産業(JT)のホームページには、こう記されています。
「(厚生労働省によると)たばこは肺がん、心筋梗塞等の虚血性心疾患、肺気腫等の慢性閉塞性肺疾患など多くの疾病や、低出生体重児、流・早産など妊娠に関連した異常の危険因子であるとしています。私たちも、喫煙は特定の疾病(妊娠に関連した異常を含む)のリスクを高めると認識しています」
「しかしながら、がん等、喫煙と関連があるとされる諸疾病の発生には、住環境(大気汚染等)、食生活、運動量、ストレス、遺伝的要因等様々な要因が影響しており、喫煙以外の全ての要因を同じにした集団を比較することは困難です。また、疫学研究は喫煙者と非喫煙者の集団同士を比較するものであり、個々の喫煙者について疾病のリスクを明らかにするものではありません」
「喫煙の健康への影響については今後更なる研究が必要であるものの、私たちは、喫煙が特定の疾病のリスクファクターであると考えています。喫煙するかしないかは、喫煙の健康への影響・リスクに関する情報に基づいて、個々の成人の方が決めるべきものです」
コメントを長々と引用しましたが、リスクがあることを認めながらも、その根拠は十分ではなく、喫煙の判断は大人のみなさんが判断してください、と述べているように聞こえます。
たばこの販売量がどんどん減少すれば、JTの経営の根幹が揺らぐので、なんとか喫煙する人を減らしたくないとの気持ちがにじみ出ていますが、国民の健康を考えて、この際、たばこの販売が減るのはやむを得ないと覚悟したほうがよいと思います。
たばこの害については、喫煙者のみならず、周囲で煙を吸わされる人の健康にも影響を及ぼします。わたしは、大阪の食堂やレストランで禁煙席が少ないことに不満で、隣に喫煙者が座ると席を変わってもらいたくなります。たばこを吸う人はこうした他人の迷惑は分かっていないのが、とても残念です。
JTのホームページでは、喫煙者が吸入した煙(主流煙)の吐出煙と、たばこの先端から出る煙(副流煙)とが、空気中で拡散し、薄められたものを「環境中たばこ煙」と呼んで、「周囲の方々、特にたばこを吸われない方々にとっては迷惑なものとなることがあります」としていますが、こうも指摘しています。
「環境中たばこ煙は非喫煙者の疾病の原因であるという主張については、説得力のある形では示されていません。環境中たばこ煙への曝露と非喫煙者の疾病発生率の上昇との統計的関連性は立証されていないものと私たちは考えています。また、環境中たばこ煙は、空気中で拡散し、薄められているので、喫煙者が吸い込む煙中の成分の量と比べると、非喫煙者が吸い込む量は極めて少ないものです。動物で発がん性を評価する試験においても、環境中のたばこ煙により、がんを発生させることは極めて困難です」
どうも歯切れが悪いですが、疾病の原因になるとは立証されていないとはいえ、他人に迷惑がかかるのは明白であることを認めているのです。
これほど本人にとって有害であり、他人に迷惑である商品を、成人であればだれにでも手軽に購入できるのは、いかがなものかと思います。
英国では1300円、ニューヨーク州でも750円です。ドイツ、フランスでも600-800円と2倍もしています。日本の安さが際立っています。
男性の喫煙率はそのたばこの安さのせいもあって、日本の男性の喫煙率は4割、20%台のイギリスやアメリカと比較してかなり高いのです。国民の健康を考えるうえでも、欧米並みまで値上げをすべきです。
たばこは健康によくないことは明らかで、その結果、医療費がかさむことにもなります。その負担してもらううえでも増税することはあっていいのではないか、との議論があります。
いわゆる「喫煙の社会コスト」と言われているものです。喫煙により、喫煙者個々人だけでなく、社会全体として損失が発生しているのではないか、そのための負担を考えてもよいのでは、との指摘です。
JT
つまり、因果関係の有無の結論が出ていない段階では、社会コストを払う必要はないとの見解です。とはいえ、社会保障費に充当すれば、福祉社会に貢献するわけです。有害であるのですから、その貢献をすることを考えるのかいいのではないかと思います。
たばこ税は年間2兆2000億円。たばこ1箱300円の場合、このうち174・88円がたばこ税と特別税、14・28円が消費税です。消費が減らなければ、その増税で9兆円も税収が増えるそうです。たとえ消費が減り、税収がその半分になったとしても、消費税2%分以上に当たり国の財政に大きく寄与します(わたしの周りでは、たとえ1箱1000円になっても止めないという人が圧倒的に多いですが)。
JTは「2003年と2006年に行われた増税のたびに(たばこの)消費減少が加速し、期待された税収増は実現していない」と反論しています。しかし、もはや「脱たばこ社会」を望む声が強まっており、たとえ税収増がそれほど期待されなくても、たばこ離れが進むだけでも、わたしは1箱1000円は歓迎だと思います。


by neonominalist
中川昭一氏の「低次元」辞任。